米経済、ブレグジットの嵐に耐えるか


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 【ワシントン】欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、今後数カ月にわたり米経済全般を揺さぶる可能性が高い。だが沈没させるには至らないだろう。

 ブレグジット(英国のEU離脱)の決定は、当初見られた市場の混乱が落ち着いた後、米経済の低成長につながる多数の要因の仲間入りをするだろう。米国はリセッション(景気後退)終了から7年間、数々の海外リスクを切り抜けてきたため、エコノミストらは今回もこれを乗り越え、国内の懸念材料が再び中心的話題になるだろうと予想している。

 英国の決断は少なくとも主に3つの形で米経済に打撃を与えるとみられている。つまりドル高が進み、企業景況感が圧迫され、金融状況が引き締まる。これらは全て、特に海外市場に強い米企業や投資家の負担になるだろう。一方、米国の家計は輸入品やガソリン価格の下落にある程度恩恵を受ける可能性が高い。

 これはいずれ、米経済が製造業や輸出中心から個人消費や住宅へ移行する動きを加速させる可能性がある。

 先週は投資家が英国や欧州を離れ、比較的安全な米国資産に資金を移動したため、ドルが上昇した。英国の決定でEUの分裂がさらに進むとの懸念を踏まえると、ドル高は続く公算が大きい。

 ドル高が持続すれば、米国の製品やサービスは海外市場で割高となるため、輸出需要は抑制される。同時に、米消費者にとって輸入品が割安となるため、インフレは抑えられ、賃金の伸びが抑制される。

 また、ドル建て債務を抱える国や企業にとって借り入れコストが上昇するため、世界の需要も減少する。そうなれば商品(コモディティー)価格は下落し、米国のエネルギー・金属部門は再び圧迫される。

 英国の決定は企業景況感にも打撃を与えるだろう。エコノミストの多くは、この決定で英国経済がリセッション(景気後退)に陥り、他のEU諸国では長期的な経済問題が生じると予想している。欧州はすでに金融危機の遺産から逃れようともがいている。いまだに不良債権が金融部門の負担になっており、投資が抑制されている上、平均失業率は10%を上回る。

 ブレグジットにより、米企業にとって単一の輸出市場としては最大のEUで経済的・政治的不確実性が高まることで、こうした問題は悪化する。23日の英国民投票は、反EU政党に新たな勢いを与え、自由貿易と労働力の移動を促すため数十年前に設計されたEUがさらに分裂するリスクを高めた。

 世界市場が乱高下すると、多くの米企業のリスク志向は低下する傾向がある。企業幹部は身を潜めてブレグジット後の嵐が去るのを待ち、新製品や機械、プロジェクトへの投資を見送る可能性が高い。つまり生産性の伸びが減速し、賃金を下押しすることになる。

 全米製造業者協会(NAM)のチーフエコノミスト、チャド・モートレイ氏は、企業は「現在、かなり慎重になっている」としつつ、「製造業者が取り組むべき悩みの種が一つ増えたにすぎない」と述べた。

 低成長やドル高、原油安が原因で、米企業投資は英国民投票の前から低迷していた。1-3月期は民間の非住宅投資が前期比6.2%減少したが、投票結果を受けてさらに減少する恐れがある。

 FRBのイエレン議長は先週の議会証言で、民間部門の低調な支出が最大の懸念の一つだと強調した。「民間投資はかなり弱い」とし、「生産性の伸びがこれほど低調である理由の一つだ」と述べた。

 見通しのリスクや悲観度が高まれば、一部の企業や消費者の借り入れコストは上昇する可能性がある。例えば、市場が投資適格級の米社債に求めるプレミアムは国民投票を受けて上昇した。銀行も融資に一段と消極的になっている。株価の下落で資本コストも上がる恐れがあり、企業はプロジェクトの実現性が低下する中、支出の再計算を強いられるかもしれない。

 だが、悪いニュースばかりではない。この4年にわたり欧州債務危機の嵐をたびたび切り抜けてきた米経済は、比較的健全なままだ。

 米国債に安全性を求める投資家が利回りを押し下げている。これが金利の低下につながり、FRBが数カ月以内に利上げする見込みは薄れている。そうなれば米国の住宅購入者や借り換えを望む住宅保有者にとって住宅ローン金利は低下する。

 その上、世界の成長見通しの冷え込みとドル高でエネルギー価格が下落すれば、消費者はガソリン代を節約できる。24日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)では原油先物価格が約5%下落した。

 ドル高はまた、米消費者が英国や欧州の製品を割安で購入したり、安く海外旅行したりできることも意味する。

 マニュライフ・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、ミーガン・グリーン氏は「足元の回復の原動力となっている米消費者が、ブレグジットで短期的に変調を来す可能性は低いとみている」と指摘した。

 「ただ、欧州の他国に悪影響が及べば、米国のリセッションの可能性は一段と高まる」という。

By Ian Talley and David Harrison

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